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海辺フォーラム
関係者ロングインタビュー
第3回 青木康太郎さん
高知県にある室戸少年自然の家で、カヤックやスノーケリングなどの指導をしている専門職員。1976年大阪生まれ。
―最近で印象に残っている海はどこですか?
(青木)去年の三月に、沖縄の慶良間にダイビングの免許を取りにいったのですが、そこで潜った海が印象的でしたね。室戸のほうでは、スノーケリングをやっていますが、岩場なんです。沖縄は、砂浜があってサンゴ礁があって、環境が全然違い、違った海の美しさを感じたというところが印象的でした。もちろん、室戸の海も負けないぐらいすごくきれいなところですが、普段見ている海と違う環境に出会ったので、いいなと感じました。
海って、いろいろな環境があるじゃないですか。サンゴ礁があって、海藻の生い茂る海があったり。そういう意味で、慶良間にいって、室戸の良さを再発見したってこともありますね。室戸でも熱帯魚などがいますが、黒潮に乗って沖縄のほうから流れてきていますよね。慶良間で潜ってから、そういう海のつながりについても一層意識するようになりましたね。
―どういうきっかけで、今のお仕事に就いたんですか?
(青木)大学時代にボランティアで障害者を対象としたキャンプを始めたのがきっかけです。その後、ボランティア活動を続けながら大学院に進んで、野外教育について学びました。就職のときに、このような自然体験のことができるようなところに就職したいなって思っていたところ、少年自然の家が民間から公募して準専門職員という本部採用の職員を採るという制度ができたのです。実は学生時代に、室戸で長期キャンプ(17泊18日)にリーダーとして参加していたので、室戸の所長さんにお願いして推薦してもらいました。
―野外活動に携わったきっかけは?
(青木)もともと、小学生でカブスカウト、中学生でボーイスカウトをやっていたのですが、そのときは野外活動に良いイメージがなく、高校でやめてしまいました。それからしばらくキャンプから離れていたのですが、大学生の終わりのころに、不登校キャンプのリーダーとして参加したんですね。8泊9日で行われた不登校キャンプは、自分にとってはすごくインパクトがあったキャンプになり、それから野外の道に進みたいと思いました。不登校の子ども達はなかなか家を出られないとか、すごく暗いってイメージがあったのですが、そのキャンプでどんどん変わっていく姿をみて、「なんで変わっていくんだろうなあ」と思ったのがきっかけで、キャンプについて勉強したいと思ったんです。
―きっかけになったキャンプについてはもう少し教えてください
(青木)京都府立のるり渓少年自然の家で、初めて不登校キャンプをするというので、私の大学時代の恩師のところに、誰かリーダーがいませんかというリーダー募集がきていたんです。最初は、リーダーとして参加するのが初めてだったので非常の不安を感じていました。そのキャンプには、小児科医やカウンセラーがいて、色々アドバイスをいただいたのですが、最初にまず言われたことが、「何もするな」でした。リーダーとして何もするなというのは、「じゃあ、どうしたらいいんだ」って話になりますよね。僕らは四苦八苦しながら子ども達と関わったんです。そうしたら、こっちが何もしなくても、子ども達はどんどん変わっていくんですよ。わけも分からず、ただすごく疲れたキャンプだったのですが、子ども達は変わっていく姿に「なんでだろう」という疑問が残ったままだったので、「こういうキャンプって、どれだけ人を変えるのかとか、不登校にどんな効果があるのか知りたい」と思い、野外活動について勉強することにしたのです。
―なんでだろうって疑問は解けたんですか?
(青木)やっぱり、友達同士でかかわるっていうことと、自然に触れることで子どもが感動したり、そこでそれを話題に子どもどうしが話したりってことでしょうか。特に普通のこどもたちにはなんでもないことでも、不登校のこともたちにとっては自分達で何かをするってことが大きいと思います。そして、そこでの体験が自信につながっていくのだろうと思います。
そのキャンプでは、基本的に大人は何もしないのです。「これやりなさい」、「あれやりなさい」とかはもちろん言いません。子ども達が「これどうしたらいいの?」と聞きてきても、私は特にこうだよって教えたりはしません。例えば、カレー作っていて「ジャガイモどうやって切るの」とこどもが聞きますよね。別に、ジャガイモはどんな大きさでもかまわないので、「どんな大きさでもいいよ。自分が食べやすいと思う大きさでいいんじゃない。」としか言いません。
もちろん、ちゃんとした技術を教えるってことも大切ですが、考えさせるという部分がやっぱり大切なんじゃないかなと思います。期間が短い1泊2日とかの学校の授業では作り方を教えるのが目的ですから、しっかり教えますが、余裕がある場合には考えさせるようにしています。やはり、失敗体験というのも大切ですし、失敗体験から成功体験につながるようにすることの機会なのかなと思っています。
そういう体験のなかで、私自身も少しずつ変わってきたところもあります。少しでも知りたいと思い、大学院まで行ったのですが、まだちゃんとした答えは出ていませんね。そういう意味でも今の仕事が勉強の連続で、すごく面白いですね。
―室戸少年自然の家ってどんな施設なんですか?
(青木)学制100年を記念してできたのが少年自然の家です。昭和50年にはじめて少年自然の家ができたのですが、その第1号が今私のいる室戸です。それから、現在にいたるまで全国で14施設できています。もともとは、小中学生の野外体験や集団宿泊体験を行うことを目的に設置した国立の施設でした。それが、平成13年度に独立行政法人化して、それぞれの施設が地域の特性を生かした活動を行い、色々な取り組みをはじめました。その時、室戸には、専門職員に海洋スポーツの専門家がいので、海に特化した事業をスタートさせたのです。その結果、それまで年間利用者が4万人だったのが、5万人、6万人と大体1年ごとに1万人ずつ増えていきました。周囲からは、海洋型に転向したのが成功の要因だと言われています。
―具体的にはどんな活動をしているんですか?
(青木)うちの施設で主にやっている海の活動は、オーシャンカヤック、スノーケリング、ヨットの3種目がメインですが、それ以外にも、ビーチクリーンアップやクラフトなどいろいろな活動をしています。そういった個別の活動の指導をしていますが、非常に力をいれているのが、主催事業の日本版スクールウォーターワイズです。
ウォーターワイズは、ニュージーランドの文部省とヨット協会が合同で作成した水辺活動のプログラムです。ニュージーランドも日本と同じように島国で、子ども達の水難事故が多かったことから、それを何とか減らすために、子ども達に水への安全教育を行うためのプログラムとして始まりました。それ以外にも、ヨットが風を受けて進む仕組みだとか、地域のマオリ族の文化だとか、海に関わる総合的なプログラムになっています。ニュージーランドではウォーターワイズの施設が7箇所設置されていて、学校が遠足としても利用されています。
日本になんとか海洋のプログラムをもってこられないかということで、前任の方が、その考え方を取り入れて、スクールウォーターワイズというプログラムを主催事業として作りました。それが今も続いていて、3泊4日の宿泊体験の中で、マリンスポーツや環境教育、生活文化、クラフトなど、これらの活動を学校側の希望にあわせて組み合わせて、いろんな角度から海を知りましょうという事業を行っています。
―確かにいろいろな活動を組み合わせることで効果は高まりますよね。
(青木)私も水辺活動に取り組んでまた日が浅いのですが、一つ感じるのは、水辺活動に取り組んでいるいろんな団体がありますよね。カヤックに特化していたりとか、ダイビングに特化していたりとか、各種目に特化している団体があっても、それを総合的にプロデュースするというのがあまりないように感じます。やはり、我々のような少年自然の家が、専門的なアクティビティを上手く組み合わせて、効果的なプログラムを作っていくということが一つの役割じゃないかなと感じています。つまり、コーディネーター的な役割が、今、自然の家に求められているところではないでしょうか。また、色々な活動を総合的に取り入れて、指導していくことによって、どのような成果がでるのかということも研究しているところです。
例えば、ダイビングにしろ、クリーンアップにしろ、体系化されたプログラムがありますよね。でも、水辺活動を総合的にやっていこうというところが、まだ体系化されていないと思います。是非、そのようなものができたらなというのが私の考えです。まだ取り入れて3年ですので、もっといろいろなことをやってみて、考えていく部分があると思います。
―海の活動と山の活動の違いってなんだと思いますか?
(青木)山での活動は、バリエーションが豊富で、環境教育に特化したプログラムだけではなく、長距離を自転車でこいだとか、何キロ歩いたとか、冒険的な要素を含んだプログラムも多いです。しかし、山や林といった活動環境だけで考えると、海のほうが自然に意識を向けさせることができる要素が多いのではないかと感じています。例えば、海洋スポーツの場合は、海の中に入ることによって、直接肌に海水の刺激を受けることができるので、そこで活動するだけで環境を意識しやすいのではないかと思います。海に入った後、しょっぱい、ヒリヒリするとかいっていますからね。
―年間何人ぐらいがウォーターワイズを体験するんですか?
(青木)ウォーターワイズのプログラム自体は、主催事業なので年間350人前後です。それ以外に、1泊2日など宿泊訓練といった受入事業での利用者数は、年間12,000人くらいいます。でも、こちらはプログラムの組み合わせであって、「海を総合的に理解する」という目的を達成するためにプログラムの構成をしているウォーターワイズとは違いますね。やっているひとつひとつの活動を見れば一緒ですが、その組み合わせによって達成できることが変わってくると思います。例えば、単にスノーケリングをやるだけでは「海が楽しかったな。きれいだったな」で終わってしまう。でも、クリーンアップを一緒にすることによって、そこに違う視点が入ってきて「きれいな海を守りたい」というような気持ちを育むことができると思います。
―それは期間が1泊2日と短いからですか?
(青木)そうですね。学校も忙しくて、3泊4日とれるところは少ないですよね。1泊2日、2泊3日で子ども達にどれくらいのインパクトを与えるプログラムができるのかというのが、今の我々の課題ですね。
ただ体験するだけではだめなので、話をして、体験をして、体験から学ぶという流れが必要で、マリンスポーツ、環境教育、生活文化、クラフトっていう4回くらいに分けて、集中的にやるよりも、期間をおいて日常的にやっていくことのほうが、効果的なんじゃないかなと思っています。
もちろん、1泊2日、2泊3日でも無駄だとは思いませんし、そういう短期間でくる子ども達にいかに効果的に伝えるかも大切だとおもいます。どういう形で提供するのがよいのか模索中ですね。
―「海辺の環境教育フォーラム」との関わりを教えてください
(青木)昨年、賀茂村ではじめて参加させていただいたのですが、すごく民間団体の人の力強さを感じましたね。環境について高い意識をもって方々がかかわろうとしているなかで、ショックだったのが、国公立の施設の職員が全くおらず、いたのがうちの施設だけなんですよ。やっぱり、民間の方々が力をいれているのに、こういう公的な施設がもっと関わるべきじゃないかなと思いましたね。皆さんアイディアが非常に多くて、子ども海の日のアイディアとか、もちろん、フォーラムを立ち上げたこと自体が力強いですし、そういう意味ですごく良い刺激になり、僕自身が色々な人と知り合えて良い勉強になりました。
―フォーラムを室戸で開催しようと思ったきっかけは?
(青木)先ほど言いましたように、国公立の施設の職員が参加していないのがすごくショックでした。そこで、フォーラムに参加している民間の方たちと、そういう施設の人たちの橋渡しができたらいいなと思ったのがきっかけです。
国公立の施設の場合、何かしようとするときに、外から講師を呼んできて活動をすることが多いのですが、「来てもらってやってもらって、ありがとうございました」って感じです。施設の職員と講師の方とが、対等に話をして何かを作り上げていくという感じがないような気がします。講師は専門的な知識をもってますけど、こっちは専門ではないですが、もっとお互いが協力して一つのことをやりたいと思っています。そこで、今回、うちでフォーラムをやることが、民間の人たちと公共施設の協働の良い事例にできればいいな、そういったきっかけになればいいなと思っています。
―今度のフォーラムの特徴はなんでしょう?
(青木)今までの1泊2日と違い、今回は2泊3日でやるので、体験し、話を聞き、自分達で話題を提案したりしながらアイディアの出し合い、考えるということを、2泊3日のなかでできたらなと思っています。その中で、室戸の特性である「漁業」が中心的なテーマとして、漁業活動を体験してもらったり、漁業に関連する施設を見学してもらったり、漁業や漁村の関係について基調講演で話してもらいたいと考えています。
それと、繰り返しになるんのですが、教育関係者と民間の団体の方との橋渡しになれればいいなと考えています。今回は、教育関係者、国公立の教育施設の関係者にたくさん声かけをしています。ニーズは結構あるんですよ。「そういうことを勉強する場がほしい」とか、「これから海の関係で新たなプログラムをしたいんですけど何かないですか」という声を良く聞くんですよ。だから、1回フォーラムに来てもらって、実際にいろいろな活動をしている人たちと直接知り合いになれば、「次、是非来て下さい」ということになって、新しい取り組みがたくさん生まれると思うんです。
平成17年1月17日
聞き手:高橋啓介(ネイチャーライティングチーム・ミズナギ)
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