リレーコラム/その7「インタープリテーションの未来」

西村仁志 広島修道大学教授/日本インタープリテーション協会理事

第二走者の増田由香子さんが「国立公園オタク」なら、私は「ヨセミテオタク」(28回も訪問・滞在)なので、ヨセミテ国立公園の話を書きたいところですが、ここではそれを泣く泣く封印して、チームとしてのゴールを目指したいと思います。

さて、私は2016年に「インタープリテーション活動の新しい動向」という論文を発表しました。まずインタープリテーション活動の発端、アメリカや日本における組織的な導入の経緯、そしてその時代ごとの役割の変遷について整理しました。そのうえで、インタープリテーションはその当初から、①自然環境や文化的環境への関心と理解を高めること、②興味を刺激・啓発し、生活に新しい視点を与えること、③活動主体(担当行政機関や民間団体)の目的・業務の内容を知らしめることという3つの役割をもっていたのですが、近年さまざまな新しい領域でもインタープリテーション活動が取り入れられるようになったことで、その役割は社会問題の解決や持続可能な社会の実現にむけて大きく拡大してきているという内容でした。それは例えば生物多様性保全におけるCEPA、科学技術コミュニケーション、ESD+SDGsなどの領域です。ただこれは「インタープリター/インタープリテーション」側の人間や団体がそれを牽引、あるいは「プッシュ」してきたというよりも、それぞれの領域で「インタープリテーションという機能」が必要とされてきている。つまり「プル」されていることで拡大してきたように思います。

    

ヨセミテ国立公園のインタープリテーションの様子(筆者撮影)

一方これと似ている状況と役割に「ファシリテーター/ファシリテーション」があるでしょう。両者を比較してみると(両方に関係している人も多いのですが)ファシリテーションはかなり普及や一般化が進み、学校教育や企業経営などの関係者にも認知が拡がっていますし、実践者の層も大きく拡がりました。これは「プル」もありつつ、「ファシリテーター/ファシリテーション」側の関係者による「プッシュ」も大きいように思います。例えば研修会、集会、研究会や本の出版などによるものです。「インタープリター/インタープリテーション」ももっともっと「プッシュ」していかないといけないなと思っています。

私たち関係者も遅ればせながら「インタープリター・トレーニング」(ナカニシヤ出版)の出版、インタープリテーション協会の法人化、それから昨年の「日米インタープリターズフォーラム」の開催へと駒を進めてきています。昨年の日米フォーラムでは「これからのインタープリテーションを考える」と題して、社会変革やSDGsにかかわる分科会を担当しましたが、その役割は社会問題の解決や持続可能な社会の実現にむけてきわめて大きいという確信は揺るがないものとなりました。

 

「日米インタープリターズフォーラム」(2017.5 清里)
「これからのインタープリテーションを考える」分科会の様子(筆者撮影)

今年のフォーラムでも各地からの実践報告や研究発表を受けて、ぜひインタープリテーションに関する議論と内容を充実させていきたいと思います。そこから新しい本をつくりましょう。研修会、集会のスタイルや方法も編み出しましょう。そうやって、みんなで一緒にインタープリテーションの未来を拓いていきたいですね。

リレーコラムのバトンはいよいよアンカーの林浩二さん(千葉県立中央博物館)に渡ります。

では、清里でお会いできることを楽しみにしています。